赤十字の父と呼ばれたスイスの実業家。赤十字を創設し、1901年に第一回ノーベル平和賞を受賞したことで知られています。ジュネーブに生まれ、厳格なカルヴァン派の伝統のなかで育てられました。父親は福祉孤児院の仕事にかかわり、母親も福祉活動に熱心だったといいます。1859年、イタリア統一戦争で戦場に放置された死傷者の姿をみて、その救援活動をしている地元の女性たちの群れに入り、自らも救援活動に参加しました。これが、戦場において敵味方の区別なく負傷者の救護に当ることを目的とする赤十字の創設の契機となり、1863年にはジュネーブで負傷兵救済国際委員会が結成されました。その後、各国赤十字社の創設から国際赤十字に向かっていく過程で、赤十字の活動範囲は戦争捕虜に対する人道的救援、一般的な災害被災者に対する救援へと拡大していきました。彼自身はこの活動から身を引き、世間からも忘れられていましたが、晩年、老人ホームにいたところを一人のジャーナリストに発見され、それが第一回ノーベル平和賞の受賞につながりました。赤十字のマークは、彼の母国であるスイスの国旗が元となっているという説もあります。